「立役(たちやく)」という言葉を広い意味で使う場合は「女方」に対する「男役全般」を指します。その語源は座って音楽を演奏する「地方(じかた)」に対し立って動作をする「立方」から転じたといわれます。やや狭い意味では「敵役」に対する「善人一般」ということになり、それが江戸の勇壮な「荒事」と上方の柔らか味のある「和事」、そして正義感と思慮分別に富み凛々しい姿が描かれる「実事」に分けられ、さらに狭義ではこの「実事」のような役柄に限定して立役と呼ぶこともあります。その最も代表的な役に『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助があります。(金田栄一)
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『勧進帳』[左から]武蔵坊弁慶(松本幸四郎)、富樫左衛門(市川染五郎) 平成27年11月歌舞伎座