かたきやく 敵役

物語が展開するのにまず必要な役柄が「敵役」でしょう。敵役すなわち悪人が登場することで緊迫感が高まり、話が面白くなるので、立役の中から敵役が最初に役柄として確立しました。天皇家や公家で国を横領しようとする巨悪が「公家悪(くげあく)」、天下や御家の乗っ取りを企む「国崩し(くにくずし)」、さらに実質的な悪役が「実悪(じつあく)」、このあたりの役には「大膳(だいぜん)」「弾正(だんじょう)」といった役名がよく使われます。その他にはお家騒動の黒幕となる親戚筋の「叔父敵(おじがたき)」、悪の手先の「端敵(はがたき)」、赤い化粧で粗暴な「赤っ面」、半分道化役の「半道敵(はんどうがたき)」などがあります。(金田栄一)

【写真】
『暫』清原武衡(市川段四郎) 平成22年7月新橋演舞場