人々が関心を寄せる話題や事件はいつの世も芝居の題材となります。歌舞伎における人気演目も何度も繰り返し上演されることで、パターンが定着してゆきました。その同じ題材を扱う演目群を「○○物」などと呼び、その大きなくくりだけで基本的な内容が把握できてしまいます。つまり江戸時代の観客にとって分かりやすいのが何よりでした。特に人気が高かったものに「お家騒動」「仇討」「傾城買い」「心中」などがありますが、幕末以降は盗賊を主題にした「白浪物」も高い人気を博してゆきます。(金田栄一)
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『青砥稿花紅彩画』[左から]南郷力丸(市川左團次)、赤星十三郎(中村時蔵)、忠信利平(坂東三津五郎)、弁天小僧菊之助(尾上菊五郎)、日本駄右衛門(市川團十郎) 平成20年5月歌舞伎座