れいげんたん 霊験譚

わかりやすい言葉でいえば「霊験あらたかなお話」といったところでしょうか。死んだはずあるいは重い病を患った人物が、神仏のご利益によって蘇生あるいは病が治癒し、幸せな姿を取り戻したり本懐を遂げるといった結末を迎えます。代表的な演目には、身を投げた盲目の沢市と妻お里の命が壺坂観音の霊験によって救われ、沢市の目も開くという『壺坂霊験記(つぼさかれいげんき)』があります。『摂州合邦辻』の俊徳丸は、四天王寺の観音に祈願して病平癒した俊徳丸伝説に由来しています。また水天宮の加護によって筆屋幸兵衛が命と正気を取り戻す『水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)』や、いざりの勝五郎が仇討を果たす『箱根霊験躄仇討(はこねれいげんいざりのあだうち)』といった演目があります。(金田栄一)

【写真】
『摂州合邦辻』[左から]奴入平(坂東巳之助)、合邦道心(中村歌六)、高安奥方玉手御前(尾上菊之助)、合邦女房おとく(中村東蔵)、高安俊徳丸(中村梅枝)、息女浅香姫(尾上右近) 平成27年5月歌舞伎座