家の芸

広い意味では役者の家系が代々得意とし伝えられてきた芸ということで、團十郎家の荒事や菊五郎家の怪談物などがそれにあたりますが、一方「十八番」や「十種」などと名付けられて「家の芸」として制定されたものがいろいろとあり、役者の各家に伝わっています。その発端となったのは天保期の七代目市川團十郎による「歌舞伎十八番」で、以降続々と各役者が家の芸を制定するようになりました。いずれも明治以降のもので一種の流行といった側面もあり、その時代ならではの演目やその役者固有の得意芸という色彩が強く、家の芸と称されながら今では上演機会に恵まれない演目も数多くあります。(金田栄一)

【図版】
1895(明治28)年版行「歌舞伎十八番目録」のうち「助六」(個人蔵)

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