いるいこんいんたん 異類婚姻譚

人間と人間ではないものが結婚するという「鶴の恩返し」の民話の世界のような物語を異類婚姻譚と呼びます。歌舞伎の『蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)~葛の葉」はまさしくその典型で、安倍保名は葛の葉姫と夫婦になっていますが、実は本物の姫ではなく保名に助けられた狐がそっくりな姿となって契りを交わしたという物語、しかも子まで生しているのですから不思議なおとぎ噺の世界です。また婚姻関係ではありませんが『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』では関守関兵衛のもとにやって来た傾城墨染が実は小町桜の精。『卅三間堂棟由来』で女房になったのは柳の精、『百合若大臣野守鏡』では鷹の精が恋人に変わって現れます。(金田栄一)

【写真】
『芦屋道満大内鑑』女房葛の葉(中村鴈治郎) 平成16年11月歌舞伎座