おに・せい 鬼・精

鬼は人間の暮らしをおびやかす存在。『茨木』や、『紅葉狩』、『大江山酒呑童子』などに登場する鬼は、退治される存在として描かれています。『黒塚』には人間を食らう鬼婆が出てきます。蜘蛛の精が人を悩ませる『土蜘』などもあります。
一方、花や鳥の精が登場する可憐な舞踊もあります。藤の精があでやかに踊るのが『藤娘』、白鷺の精が雪のなかで舞うのが『鷺娘』。また、獅子物の多くにはかわいらしい蝶々の化身である胡蝶の精が登場します。(前川文子)

【写真】
『紅葉狩』更科姫実は戸隠山の鬼女(市川染五郎) 平成27年9月歌舞伎座