一面の紅葉のなか美しく舞う姫が一転、鬼の本性をあらわして襲いかかる…。
竹本、長唄と常磐津掛け合いのぜいたくな音楽にのせ繰りひろげられるスペクタクルショー。
明治という新しい時代の息吹を感じさせる華麗な作品である。
紅葉が夕日に照り映える戸隠山。余吾将軍平維茂(よごしょうぐんたいらのこれもち)が従者の右源太、左源太とともに紅葉狩にやって来る。そこには宴を張る先客がいた。聞けば、やんごとない女人が侍女たちとお忍びでお出掛けとのこと。維茂が遠慮しようとすると、その高貴な姫自ら、是非ご一緒したいと誘う。そこまで言われてひいては男がすたる。言われるままに維茂は宴に加わることにする。
さっそく酒よ、肴よと下へも置かぬもてなしぶりに、盃を重ねる維茂。腰元が舞を舞い、調子に乗った右源太、左源太も滑稽な踊りで座を盛り上げる。 なおも一献とすすめられた維茂は、その代わりにと姫に舞を所望する。恥ずかしがる姫だったが、局に手を取られ舞い始め、やがて二枚の扇をつかってあでやかに舞いすすめてゆく。だが、ふと見ると美酒に酔いしれたか維茂はうたた寝をしている。姫は用心深く何度か様子を窺い、維茂が熟睡したことを確認すると表情を一転させ、維茂と従者を残して一同とともに山へ姿を消す。
入れ替わりに眠りこける維茂主従の前に現れたのは山神である。この山奥には鬼神がいて人を取って喰う、こんなところで寝ていては命は風前の灯同然と、山神は杖を突き、肩をゆすり、地団駄踏んで維茂らを起こそうと躍起になるが、一向に目覚める気配がない。とうとうあきれ返って帰ってしまう。
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