かたり 語り

主に「物語」と呼ばれる演技演出で、義太夫の「物語らんと座を構え」といった前置きで、主人公が正面を向き、過去の複雑な出来事や合戦の模様などを、義太夫の語りと三味線のリズムに乗せて、キビキビとした身ぶりを交えて語り聞かせます。もともと浄瑠璃からきた演出で、演じる役者のせりふの聴かせどころでもあり、重要な見せ場となっています。『熊谷陣屋』の熊谷次郎直実は平敦盛との一騎打ちの模様を、『義経千本桜』「道行」の忠信は壇ノ浦の合戦の顛末を静御前の前で語ります。そのほか『源平布引滝』の実盛物語、『梶原平三誉石切』の梶原景時の物語などが代表的です。(金田栄一)

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戦物語(いくさものがたり)
『一谷嫩軍記』熊谷陣屋 熊谷次郎直実(中村吉右衛門) 平成22年4月歌舞伎座