きえもの 消え物

舞台上で消費される、または消耗が始まる道具のこと。食べ物では『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』で片岡直次郎が食べる蕎麦や、『梅雨小袖昔八丈~髪結新三』で新三が大家さんに食べさせる鰹の刺身、『仮名手本忠臣蔵』七段目で斧九太夫が大星由良之助に突きつける蛸の切り身など。蕎麦は本物の蕎麦を用意するが、刺身は羊羹で作る。『新版歌祭文』野崎村の場の冒頭でお光が刻む大根も本物が使われる。
また、血糊(ちのり)も消え物の一種で、『仮名手本忠臣蔵』五段目で斧定九郎が撃たれて絶命する場面では特に印象的に使われる。(橋本弘毅)

【写真】
本物の蕎麦を食べる直次郎
『雪暮夜入谷畦道』片岡直次郎(尾上菊五郎) 平成20年10月歌舞伎座