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牛若丸、兵法を伝授される~鞍馬天狗と鬼一法眼

平治の乱後、平清盛が絶大な権力を持つようになります。『平治物語』は清盛が常盤を自らの側室とする代わりに牛若らの命を救ったことを記しています。牛若は鞍馬寺の阿闍梨(あじゃり)の弟子となり、遮那王(しゃなおう)と名乗ります。成長した遮那王は父の仇を討つべく、昼間は学問、そして夜は鞍馬山の天狗の指導のもと武芸の修行に励むのでした。
一方、『義経記』には、鞍馬山を出て奥州へ下った遮那王(旅の途中で元服して義経と改めます)が再び都へ上り、一条堀河に住む陰陽師吉岡鬼一法眼(よしおかきいちほうげん)が持つ兵法書の内容を知ることが記されます。はじめ鬼一に入門しようとしたものの断られた義経は、鬼一の三の姫に恋を仕掛け、兵法書を盗み出させます。これを知った鬼一は激怒し、義経を討とうとしますが果たせず、義経に去られた姫は悲しみから亡くなってしまうという物語です。
この2つの物語を結びつけたのが、文耕堂・長谷川千四作の浄瑠璃『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』です。ここでは、牛若丸が奴虎蔵(とらぞう)となって、鬼一の末弟鬼三太(きさんだ)とともに鬼一に仕えており、鬼一は元源氏の家臣でありながら現在は清盛の家来となっています。清盛に兵法書の献上を命じられて平家と源氏の間で板挟みとなった鬼一は、天狗の姿となって牛若丸の前に登場、かつて天狗に姿をやつして鞍馬山で牛若丸に兵法を指南したことを明かします。そして、切腹して清盛への義理を立てた上で、牛若丸に想いを寄せる娘皆鶴姫(みなづるひめ)に婿引出と称して兵法書を与えるのでした。(日置貴之)

【写真上】
『鬼一法眼三略巻』菊畑 吉岡鬼一法眼(中村歌六) 平成26年9月歌舞伎座

【写真下】
『鬼一法眼三略巻』菊畑 奴虎蔵実は源牛若丸(市川染五郎) 平成26年9月歌舞伎座
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