みえ 見得

見得は歌舞伎ならではの、そしていかにも歌舞伎らしい演技法のひとつで、頭を回すと同時に腕や足を踏み出すなどの大きな動作をしたあと、動きを一瞬止めてストップモーションを見せます。多くの場合、見得すなわちこのストップモーションが極まったときにはパッタリとツケを入れて観客の目をひきつけます。一種のクローズアップ効果であり、いかに観客の心をつかみ印象付けるか、いかに役者を際立たせるかといった演出のひとつです。一人でする見得の代表的なものには『暫』などの「元禄見得」、『鳴神』などの「柱巻の見得」、『勧進帳』の「石投げの見得」などがあります。またいろいろな演目の幕切れで、複数の人物が同時に一枚の絵になるように見得をして同時に極まる演出もありますが、これを「引っ張りの見得」または「絵面(えめん)の見得」といいます。登場人物が必ず一枚の絵になったように止まって幕切れを迎えるというのも歌舞伎の大きな特徴の一つです。『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』の幕切れが「絵面の見得」の典型です。(金田栄一)

【写真】
柱巻の見得
『鳴神』鳴神上人(中村橋之助) 平成24年2月新橋演舞場