平たくいえば男女の痴話喧嘩といったところでしょう。『廓文章』「吉田屋」では落ちぶれた姿の藤屋伊左衛門が、恋しい傾城の夕霧が病に臥せっているとも知らず、座敷で客をもてなす姿に機嫌を損ねて散々な憎まれ口をたたきます。また歌舞伎十八番の『鳴神』では雲の絶間姫がいろいろと仕方話を展開した末、「あんまり戯れがあまってなあ、つい口説になったわいなあ」というせりふが登場します。口説と書いて「くぜつ」と読むこともあります。(金田栄一)
【写真】
『廓文章』[左から]扇屋夕霧(中村魁春)、藤屋伊左衛門(坂田藤十郎) 平成20年11月歌舞伎座
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『廓文章』[左から]扇屋夕霧(中村魁春)、藤屋伊左衛門(坂田藤十郎) 平成20年11月歌舞伎座