しんかぶき 新歌舞伎

明治以降、それまでの座付作者ではない、演劇改良運動に刺激を受けた外部の作家らによって書き下ろされ文学性をより追求した新たな作品群が登場、それを新歌舞伎と呼びます。その多くは戯曲と呼ばれる劇文学として発表され、歌舞伎俳優によって演じられながらも作品の本質と性格はむしろ西洋演劇と呼ぶにふさわしいものがあります。主な作家と作品には坪内逍遥の『桐一葉』『沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)』、岡本綺堂の『鳥辺山心中』『番町皿屋敷』『修禅寺物語』、真山青果の『元禄忠臣蔵』などがあり、いずれも整然とした作者の主張が美しい日本語で語られ、演劇として高い完成度を示しています。このほか明治、大正、昭和と時代を経るなかで岡村柿紅、池田大伍、山本有三、菊池寛、谷崎潤一郎、宇野信夫などが新歌舞伎の作品を残しています。なお近年は役者の個性に当てて人気作家が筆を執り、そこに歌舞伎ならではの手法を駆使した新鮮な演目が数多く登場していますが、これらは「新作歌舞伎」と呼んで新歌舞伎とは一線を画しています。(金田栄一)

【写真上】
『沓手鳥孤城落月』[左から]豊臣秀頼(十五代目市村羽左衛門)、淀の方(五代目中村歌右衛門) 上演年月不明 歌舞伎座

【写真下】
『頼朝の死』将軍源頼家(中村梅玉) 平成22年10月新橋演舞場