たちまわりのどうぐ 立廻りの道具

歌舞伎では事件の犯人や逃亡者を捕まえる捕物は立廻りを見せるための重要な場面だ。立廻りでは、シンと呼ばれる立廻りの主役と、カラミと呼ばれる大勢の捕手や四天が下座音楽にのせて連携して動き、さまざまな道具を使って美しい形を見せる。カラミが使う主な道具は十手(じって)と三つ道具(みつどうぐ)。捕物に使う三つ道具は突棒(つくぼう)、刺股(さすまた)、袖搦(そでがらみ)の三種。また六尺棒、捕縄、梯子なども。これらは実際の捕物でも使われていた。シンの役は刀や槍を使うことが多い。
立廻りはリアリティより見た目の美しさや華やかさを重視する場合が多く、時には傘のように本来捕物では役に立たなそうなものが使われることもある。『道行初音旅』や『道行旅路の花聟』のような舞踊でゆったりとした音楽にのせて進行する所作ダテでは、見た目の華やかさを重視して、持ち枝と呼ばれる花のついた小枝や、槍の先に花がついている花槍なども使われる。(橋本弘毅)

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十手を持った捕手たちに囲まれる弁天小僧
『青砥稿花紅彩画』弁天小僧菊之助(尾上菊之助) 平成26年2月歌舞伎座