1. 用語
  2. 世界とは
  3. 世界定めと趣向

せかいさだめとしゅこう 世界定めと趣向

江戸の歌舞伎では、毎年11月に各座が向後1年間の役者の顔ぶれを見せる顔見世興行がありました。その準備に9月に座頭(ざがしら)と座元と狂言作者が集まって「世界定め」を行い、10月に新しい題名が書かれた看板を掲げるのが大きな年中行事だったのです。そのために狂言作者たちが代々秘蔵してきたのが『世界綱目』という覚え書きです。その中には100以上の「世界」とそれぞれの登場人物の役名、義太夫節の作品名、引書が書き込まれていました。どの「世界」も基本的な設定と登場人物がほぼ決まっていて、そこに新たな「趣向」を加えて客をあっと言わせるのが作者の腕だったのです。「趣向」というのは、簡単に言えば新奇のアイデアのことです。一つの「世界」に次々と新たな「趣向」が付け加えられ、毎年創られる作品のイメージが連鎖的に増殖し、重層的で豊穣な世界が無限に形成されてきたのが歌舞伎の「世界」の想像力であり、美学だったのです。(浅原恒男)

【図版】
初代歌川豊國「世界定(せかいさだめ)」 1803(享和3)年発行『繪本戯場年中鑑』挿画
9月12日の夜、太夫元か芝居茶屋にて、顔見世出演が決まった座頭、女形の重役(おもやく)、立作者が集まり、何の世界かを内々に定める。
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