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いせものがたりのせかい 伊勢物語の世界

『伊勢物語』は平安時代の貴公子在原業平(ありわらのなりひら)の和歌を中心とする恋物語を集めた作品です。「伊勢物語の世界」は在原業平と兄の中納言行平(ゆきひら)を中心に展開します。二人のほかに紀有常(きのありつね)と名虎(なとら)父子。能の『井筒』は紀有常の娘の亡霊が業平を慕い、彼の装束を身につけて井戸水に映る姿を見て狂乱する物語です。
主な登場人物は文徳(もんとく)天皇の皇子の惟喬(これたか)親王と惟仁(これひと)親王、行平が須磨浦で謹慎中に出会う汐汲み海女の松風・村雨姉妹などです。惟喬・惟仁親王を巡る物語は、両者の皇位継承争いを中心に展開することから「御位争い(みくらいあらそい)の世界」ともいい、ここでは紀名虎が悪役です。
また行平と松風村雨姉妹の恋物語は能の名作『松風』からきて、「松風村雨物」という世界を生みました。このように平安時代を背景に展開する芝居を「王代(おうだい)物」といいます。『倭仮名在原系図(やまとがなありわらけいず)』は「御位争い」の後日譚と「松風村雨物」が合体した芝居で、歌舞伎では「蘭平物狂(らんぺいものぐるい)」と呼ばれる場面だけが残りました。奴蘭平の大立ち回りが最大の見どころです。また1775(安永4)年初演の『競伊勢物語(はでくらべいせものがたり)』も「御位争い」を中心に展開します。「松風村雨物」には清元舞踊『今様須磨の写絵(いまようすまのうつしえ)』などがあります。(安冨順)

【写真】
『競伊勢物語』[左から]娘信夫(尾上菊之助)、紀有常(中村吉右衛門) 平成27年9月歌舞伎座
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