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おうしゅうぜめのせかい 奥州攻めの世界

「奥州攻めの世界」は11世紀半ば、朝廷より派遣された源頼義(みなもとのよりよし)・義家(よしいえ)父子による奥州での前九年の役(えき)と後三年の役が題材です。前九年の役で源頼義は安倍頼時(あべのよりとき)・貞任(さだとう)父子を追討し、頼時は戦死、貞任は首を切られます。後三年の役では義家が奥州の新勢力清原氏の内紛に介入します。義家は通称を八幡太郎(はちまんたろう)といい、源氏の氏神的存在です。
「奥州攻めの世界」でよく上演されるのが『奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)』で、前九年の役で滅ぼされた安倍一族の義家への復讐と再起の物語です。二段目が「文治住家-鶴殺し」、三段目の切が「袖萩祭文」、四段目の切が「一つ家」で、主な登場人物は、猟師の善知鳥文治(うとうぶんじ)と妻のお谷、源義家、安倍貞任・宗任(むねとう)兄弟、平傔丈直方(けんじょうなおかた)・浜夕(はまゆう)夫婦、そして貞任と夫婦になった傔丈・浜夕の娘袖萩(そではぎ)、貞任・宗任の母の岩手御前(いわでごぜん)などです。外題の「安達原」は能の『安達原』に由来します。この能は現在の福島県二本松市の安達が原の「黒塚伝説」が題材で、旅人を殺害する老婆の物語です。芝居でも「一つ家」で凄惨な妊婦殺しがありますが、最近ではあまり上演されません。歌舞伎十八番の『暫(しばらく)』に登場する正義の味方鎌倉権五郎景政(かまくらごんごろうかげまさ)は義家の家来です。また悪人清原武衡(きよはらのたけひら)は後三年の役で義家に滅ぼされました。(安冨順)

【写真】
『奥州安達原』袖萩祭文 [左から]貞任妻袖萩(中村福助)、安倍貞任(中村吉右衛門) 平成18年1月歌舞伎座
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