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たいへいきのせかい 太平記の世界

鎌倉幕府が倒れた14世紀後半からおよそ1世紀の間、日本は内乱状態でした。朝廷も南朝・北朝の二系統に分裂しました。この時期の描く物語が『太平記』です。「太平記の世界」の主な登場人物は後醍醐天皇(ごだいごてんのう)、大塔宮(おおとうのみや)、楠木正成(くすのきまさしげ)、新田義貞(にったよしさだ)、足利尊氏(あしかがたかうじ)・北条高時(ほうじょうたかとき)などです。なかでも南朝方の大塔宮と楠木正成、新田義貞を主人公とする芝居が多いのが特徴です。「太平記の世界」で最も有名な芝居は『仮名手本忠臣蔵』ですが、これは「忠臣蔵の世界」の項目で解説します。『忠臣蔵』以外では、江戸時代の1651(慶安4)年に発生した由井正雪(ゆいしょうせつ)の乱も「太平記の世界」の芝居になりました。由井正雪が楠流の軍学者(戦略・戦術学者)と称したことに由来します。代表作が『碁太平記白石噺(ごたいへいきしらいしばなし)』通称「宮城野信夫(みやぎのしのぶ)」。宮城野・信夫姉妹の仇討ちに宇治常悦(うじじょうえつ。=由井正雪)と鞠ヶ瀬秋夜(まりがせしゅうや。=丸橋忠弥)が助太刀します。
また『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』は、現在の東京都大田区矢口の新田神社の祭神新田義興(よしおき、義貞の息子)に関する伝説が題材です。
明治時代に作られた歌舞伎『北条九代名家功(ほうじょうくだいめいかのいさおし)~高時』、常磐津・義太夫舞踊『大森彦七(おおもりひこしち)』も「太平記の世界」です。いずれも初演者は九代目市川團十郎で「新歌舞伎十八番」に入っています。『名家功』の主人公は鎌倉幕府最後の執権北条高時です。また大森彦七は楠木正成を討ち取った人物といわれ、『太平記』によればその怨みにより精神に異常をきたしたとあります。(安冨順)

【写真】
『碁太平記白石噺』[左から]宮城野妹信夫(尾上菊之助)、傾城宮城野(中村時蔵) 平成16年5月歌舞伎座
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