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おそめひさまつのせかい お染久松の世界

「お染久松の世界」は大坂油屋の娘お染と丁稚(でっち)久松の心中を描く芝居です。1710(宝永7)年1月6日に大坂で油屋の娘おそめと奉公人の丁稚久松が心中した事件を劇化した「お染久松物」は現在、人形浄瑠璃『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)』、『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』が上演されます。特に後者は歌舞伎でもよく上演されます。
『歌祭文』はお染久松に久松の婚約者お光を新たな主人公に加え、「三角関係」にしたのが画期的でした。その成功は後続の芝居に大きな影響を与えます。鶴屋南北作の『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)~お染の七役」は、五代目岩井半四郎がお染をはじめ七役を早替りで演じました。舞踊では清元舞踊『道行浮塒鷗(みちゆきうきねのともどり)』通称「お染」、常磐津舞踊『初恋千種の濡事(はつこいちぐさのぬれごと)』通称「お光狂乱」があります。『浮塒鷗』は心中を覚悟する二人を猿廻しが歌祭文で意見をして、万歳で祝うという内容です。猿廻しを男性ではなく「女猿曳き」にする場合もあります。『千種の濡事』はもともと『読販』の大切浄瑠璃で、この時は前半がお染久松の道行、後半が狂乱のお光に猿廻し夫婦が絡む構成でした。それをお光の狂乱を中心に改作したものです。(安冨順)

【写真】
『新版歌祭文』野崎村 [左から]丁稚久松(中村鴈治郎)、油屋娘お染(中村雀右衛門) 平成17年2月歌舞伎座
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