古来鏡は宗教的な意味合いも強い、大切な宝物だった。『積恋雪関扉』では関守関兵衛の住処で、大伴家の重宝「八声(やこえ)の鏡」が出現し、関兵衛の正体が大伴黒主であるとわかるきっかけになる。歌舞伎十八番の『象引』には「八雲の鏡」が登場する。名は語られず、ただ宝鏡とされることもあり、舞踊の『奴道成寺』では、鐘のなかに隠されていた宝鏡を、白拍子に化けていた狂言師が奪い取る。(前川文子)
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