しんないぶし 新内節

豊後節系江戸浄瑠璃のひとつで、富士松節、鶴賀節、岡本節、花園節など枝分かれした各派を総称したもの。哀愁を帯びた曲調を持ち、江戸中期頃までは芝居で使われていましたが、やがて流しの芸や座敷芸に転化、その新内流しも町から次第に姿を消してゆきました。歌舞伎の舞台では「新内流し」と呼ばれる三味線の手が黒御簾内で長唄演奏者によって奏され、江戸の下町や夜更けの大川端といった場面を効果的に演出します。新内の名曲としては『明烏(あけがらす)』『蘭蝶(らんちょう)』が特によく知られています。(金田栄一)

【写真】
『蘭蝶』[左から] 若木屋此糸(澤村精四郎)、桜川蘭蝶実は翅蝶三郎(澤村訥升) 昭和44年6月東横劇場