しゃくはち 尺八

尺八は、真竹の根に近い部分から上を一尺八寸に切って、上の端を斜めに削って吹き口(歌口)とし、前面に四つ、裏側に一つ指孔をあけたシンプルな楽器です。その起源は古代の大陸(中国)にまで遡り、奈良東大寺の正倉院にもいくつか遺されています。
この楽器は、大陸(中国)でも日本でも、世を捨て隠棲した人の風雅な慰みとされてきました。禅宗の一派の普化宗の虚無僧は尺八を法器とし、深編笠を被り、袈裟衣を着して托鉢して歩きました。歌舞伎では『仮名手本忠臣蔵』九段目の加古川本蔵や『彦山権現誓助剣』のお園などが、虚無僧の風俗に姿をやつして旅をします。『助六由縁江戸桜』で助六が花道から登場する前に、揚幕の内で尺八が演奏されるのは、助六が尺八を吹きながらやって来るという設定です。『曽我綉侠御所染』の御所五郎蔵が帯の背に尺八を挿しているのも、やはり男伊達だからで、尺八は喧嘩の武器でもありました。(浅原恒男)

【写真】
『彦山権現誓助剣』毛谷村 一味斉娘お園(中村歌右衛門) 昭和46年5月大阪新歌舞伎座