つけしとぶたいし 附師と舞台師

どの演目のどの場面にどんな曲を黒御簾で演奏するかは、古典作品ではほぼ決まっています。ただし主演俳優の型や好みで、異なる曲を使うことはよくあります。黒御簾の演奏主任(指揮者)を舞台師といいます。復活狂言や新作の場合は、稽古のとき、どの曲を演奏するかを選ぶのが附師(つけし)で、多くはベテランの三味線方がつとめます。主演俳優や演出家の注文に応じて、その場にふさわしい曲を次々と弾いてみせることを「繰り出し」といいます。そうして決まった曲名とキッカケ、唄い出しの歌詞などを黒御簾(下座)用の附帳(つけちょう)に記録するのが附師の重要な役割なのです。(浅原恒男)

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黒御簾用附帳 1916(大正5)年1月新富座 杵屋勝四郎 (「歌舞伎音楽集成 江戸編」杵屋栄左衛門著より)