舞台下手の御簾内で演奏され芝居の演出を担う黒御簾音楽において、唄の入らない三味線演奏の部分を合方(相方とも)といいます。場面や様々な状況に適応していろいろな合方が工夫され、御殿の幕開きに使われる「管弦(かげん)」、忙しい人の出入りには「てんつつ」、海辺の場面で「千鳥の合方」、雪の場面で「雪の合方」、江戸吉原の場面で「さわぎ」、そしていろいろな場面に応用できる汎用性の高い「只(ただ)の合方」など、歌舞伎ならではのオリジナリティ豊かな合方が数多く工夫されています。多くの場合、鳴物との合奏となり、またあえて唄を加えて「唄入りの合方」となる場合もあります。(金田栄一)
【写真】
『新皿屋舗月雨暈』[左から] 宗五郎女房おはま(中村時蔵)、魚屋宗五郎(尾上菊五郎) 平成29年5月歌舞伎座
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『新皿屋舗月雨暈』[左から] 宗五郎女房おはま(中村時蔵)、魚屋宗五郎(尾上菊五郎) 平成29年5月歌舞伎座