きょうらん 狂乱

恋する人を失ったり、子供を失ったりして物狂いの状態になった人物がまさしく狂乱ですが、またそれを主題にした演目を狂乱物といいます。多くは舞踊劇として上演され代表的な演目には、子供をさらわれた母が、訪ね来た隅田川のほとりでその子の死を知り嘆き悲しむという『隅田川』とその一連の作品群、お染久松物にでるお光の狂乱、「お夏清十郎」の悲恋物語『お夏狂乱』などがあります。狂乱の状態を表わす演技演出には、片肌を脱いで紫の病(やまい)鉢巻き、うつろな目、手には笹の枝や恋人の小袖などといったいくつかのお決まりがあります。(金田栄一)

【写真】
『隅田川』斑女の前(坂田藤十郎) 平成23年12月南座