主に荒事の主役が花道で長々と述べるせりふのことをいい、歌舞伎独特の闊達な雄弁術です。歌舞伎十八番『暫』の鎌倉権五郎がもっとも代表的なところです。江戸の芝居では毎年11月の顔見世狂言として必ず『暫』が上演され、その際のつらねは必ずその役者が書くというのが決まりでしたが、実はそれも名目上で実際は座付の作者が書いていたようです。冒頭には「東夷南蛮北狄西戎(とういなんばんほくてきせいじゅう)、天地乾坤四夷八荒(てんちけんこんしいばっこう)の隅々まで、鳴り響いたる歌舞伎の華」といった少々難解な美文が並びますが、言葉の流れと勢いで観客を魅了します。また『白浪五人男』や『御所五郎蔵』などの登場人物が次々にせりふを渡してゆく「渡りぜりふ」は、つらねの変形として何人かに分担させたもの、さらに『外郎売(ういろううり)』の早口の言い立てもつらねの一種とされています。(金田栄一)
【写真】
『暫』鎌倉権五郎景政(市川團十郎) 平成22年7月新橋演舞場
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『暫』鎌倉権五郎景政(市川團十郎) 平成22年7月新橋演舞場