いとにのる 糸にノル

この場合の糸とは「三味線の弦」です。義太夫狂言で三味線のリズムに合わせてせりふを言い演技することを「糸にノル」といいます。立役では過日の合戦の様子や細かな事情を力強く語る「物語」といった演技で、女方では切々と心の内を訴えかける「クドキ」といったところで発揮されます。ここでの演技には舞踊的な動きが伴いますが、あくまでも芝居の表現なので踊ってはいけないというのも、心得として古くから伝えられています。(金田栄一)

【写真】
『菅原伝授手習鑑』[左から]舎人桜丸(中村芝翫)、舎人梅王丸(中村吉右衛門) 平成22年1月歌舞伎座