こうじょう 口上

口上は、口頭で伝言すること、直接相手に伝えることです。せりふではなく、舞台上から役者が直接観客に向かって述べる挨拶を、歌舞伎では「口上」と呼びます。「口上」だけで一幕とすることもあり、お芝居の途中で出演者が揃って客席に向いて挨拶を述べることを「劇中口上」と呼びます。古くは役者ばかりでなく座元と呼ばれる劇場代表者も並んで述べていました。現在最もお馴染みなところでは襲名あるいは初舞台といった役者の慶事の披露口上があり、とりわけ人気を呼んでいます。名優を偲ぶ追善興行では、「追善口上」が行われることもあります。観客に敬意を表する「東西東西」に始まり、「隅から隅まで ずずずい~っと希い(こいねがい)上げ奉りまする」と結ぶのが定型です。また幕切れで芝居を止め「まず今日はこれぎり」と述べるのを「切り口上」といい、これは日常会話の中にも取り入れられています。『仮名手本忠臣蔵』の通し上演では大序の開幕前に口上人形が登場し、役人替名(やくにんかえな=配役)を軽妙に述べます。(金田栄一)

【写真】
『口上』(襲名披露口上) 中村芝翫 平成28年11月歌舞伎座