こうけん 後見

舞台上で演技者を補助して小道具を渡したり片づけたり、また衣裳を整えたりさばいたりと、演技が円滑に行くよう細かな作業を受け持つ人を後見と呼びます。いずれの場面でも芝居や舞踊の段取りや流れをすべて心得た上で、呼吸を合わせてタイミングよく動かなければなりませんのでこの人たちも俳優、おもにその演技者の弟子が勤めます。一見単純作業のようですが熟練の技と信頼が必要で、ベテランによる陰の名人芸が発揮されます。時代物など芝居の場合は「見えていない約束」とされる黒装束で、顔も黒の紗(しゃ)で隠した黒衣(くろご)となり、舞踊や歌舞伎十八番など様式性の高い演目では裃(かみしも)を付けた裃後見、あるいは黒紋付の着付け後見といった姿で周りの舞台面と協調した形を取ります。(金田栄一)

【写真】
蝶を遊ばせる裃後見
『春興鏡獅子』[左から]小姓弥生後に獅子の精(中村勘九郎)、後見(中村七之助) 平成24年2月新橋演舞場