かみしも

武士の正装で、現代で言うと「制服」のようなもの。肩衣(かたぎぬ)と呼ばれる肩が大きく張った独特の形の上衣と、下にはく袴(はかま)をセットにして着用します。歌舞伎では、さまざまな裃が見られますが、色やデザインが実際より派手なものも多く、役の性格や身分などによって使い分けられています。
裃は、袴の違いによって2つのスタイルがあります。「長裃(なががみしも)」は、裾をひきずるほど長い袴と肩衣の組み合わせ。動きにくいほど裾を長くしているのには、理由があります。長裃をまとう人は位の高い人物。ちょこちょこ動き回ったり軽率な行動を控えさせたりもしますが、なにより立派で威厳があるように見えます。
もうひとつは「切裃(きりがみしも)」。こちらの袴は足首までの長さで、現代の結婚式や成人式の和装の袴とだいたい同じものです。長裃も切裃も、どちらも上と下は同じ色柄の布で作られていますが、「切裃」の場合は、上下の色が異なる組み合わせもあり、これを「継裃(つぎがみしも)」と呼びます。こちらは上下そろいよりも、ややカジュアルとされます。
切腹などの場面では、白に近い薄い浅葱色(あさぎいろ:ブルー系の色)の裃を着用します。これを「水裃(みずがみしも)」といいます(『仮名手本忠臣蔵 四段目』の塩冶判官など)。(田村民子)

【写真】
『仮名手本忠臣蔵』塩冶判官高定(尾上菊五郎) 平成19年2月歌舞伎座