のばおり・のばかま 野羽織・野袴

旅姿を表わす羽織と袴。時代物では豪華な織物の羽織袴、世話場ではリアルな扮装になります。野袴とは、裾に黒い木綿がつけられた袴のこと。歩行の旅では道辺に笹なども生えていることもあり、袴の裾は傷みがちです。そこで丈夫な木綿で裾をカバーしているというわけです。お芝居では、実際に裾がいたむことはありませんが、それを形として表しています。
野羽織の特徴は背中についている正方形の黒い布。この真ん中には、切れ込みが入っていて、刀の鞘尻(さやじり)が出るようになっています。上下ともに、機能的なアウトドアの服装です。『仮名手本忠臣蔵 六段目』の二人侍(不破と千崎)などが後者の作りになります。(田村民子)

【写真上】
『青砥稿花紅彩画』忠信利平(坂東三津五郎) 平成20年5月歌舞伎座

【写真下】
『仮名手本忠臣蔵』六段目 不破数右衛門(市川左團次) 平成24年12月南座