かみこ 紙衣[衣裳]

上方和事を象徴する衣裳で、「紙でできた粗末な着物」ということを表しています。実際には紙ではなく布で作られています。文字が模様として描かれた黒地の部分が特徴で、手習いの反古紙や手紙を布代わりに使っていることを表わしています。高貴な紫の地色が示す通り、元は身分ある人物が落ちぶれた境遇であることを表す衣裳ですが、紙衣を着る役は『廓文章』の藤屋伊左衛門や『嫗山姥』の八重桐など物語の主人公で、それにふさわしい美しい衣裳です。
特別な趣向として本物の和紙で作られた紙衣が復元され、舞台で使用されたこともあります(『夕霧名残の正月』で坂田藤十郎が着用)。(田村民子)

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【写真】
『廓文章』藤屋伊左衛門(坂田藤十郎) 平成24年12月南座