時代物の中で奈良・平安など古い時代を題材とした演目を王代物あるいは王朝物と呼びます。主な演目に蘇我入鹿にまつわる『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』や菅原道真が主題となっている『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』、さらに安倍晴明の時代を扱った『蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)』、伊勢物語などを題材にした『倭仮名在原系図(やまとがなありわらけいず)』などがありますが、お芝居を見ていますと登場人物や舞台装置には江戸時代の風俗が自由に登場します。このように、時代考証に基づくのではなく、ある意味観客目線で思いのままに描いてみせるところがまさに歌舞伎の奔放さでしょう。(金田栄一)
【写真】
『妹背山婦女庭訓』[上から]蘇我入鹿(中村歌六)、漁師鱶七実は金輪五郎今国(尾上松緑) 平成27年12月歌舞伎座
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『妹背山婦女庭訓』[上から]蘇我入鹿(中村歌六)、漁師鱶七実は金輪五郎今国(尾上松緑) 平成27年12月歌舞伎座