江戸時代、夏の間の芝居小屋は主要役者が休みを取ったり旅芝居に出るなど無人となり、また暑い場内に観客も集まりにくく、若手を中心に手軽で安価しかも涼味を呼ぶ芝居が掛けられました。夏といえばおなじみの怪談物や早替り、宙乗りや本水の使用など工夫を凝らして夏を乗り切っています。またこれを機に抜擢された若手の役者や作者にとっても格好の登竜門となっています。近年の歌舞伎座でも昭和から平成にかけての七月の市川猿之助(三代目)公演や八月の花形納涼歌舞伎など、江戸の昔から続く夏芝居のスタイルがすっかり定着しています。(金田栄一)
【写真上】
『怪談乳房榎』うわばみ三次(中村勘九郎) 平成26年8月歌舞伎座
【写真下】
『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛(中村勘三郎) 平成22年11月平成中村座
【写真上】
『怪談乳房榎』うわばみ三次(中村勘九郎) 平成26年8月歌舞伎座
【写真下】
『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛(中村勘三郎) 平成22年11月平成中村座