にょうぼう 女房

歌舞伎には数多くの女房が登場します。武士の女房、商家の女房、そしてごく普通の町人の世話女房、いずれも夫を立て、思いやりを持って陰に日向に尽くします。歌舞伎の女方は舞台上で常に立役よりやや下がったところに居るのが決まりですが、女房役はまさしくそれに則った動きと働きを見せます。『菅原伝授手習鑑』の松王女房千代、源蔵女房戸浪もその典型、そして『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)』の又平女房おとくは口ごもる夫に代わってあざやかに弁舌を振るいますが、あくまでも前に出るのは夫です。(金田栄一)

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『新皿屋舗月雨暈』魚屋宗五郎 宗五郎女房おはま(中村魁春) 平成20年1月歌舞伎座