うば 乳母

生母にかわって赤ん坊に乳を与える女性。乳人(めのと)、御乳の人(おちのひと)などとも呼ばれた。多くの場合、赤子のとき乳を飲ませるだけでなく、そのまま養育係となって世話をする。『伽羅先代萩』では、若君の乳母政岡が自身の子、千松が目の前でなぶり殺しにされるのを顔色一つかえずにいたので、赤子の時、若君と我が子を取替えていたのだろうと、謀反人側が勝手に解釈した。これが、お家騒動を阻止する大きな要因になった。
政岡や『恋女房染分手綱』の重の井などが舞台では活躍している。実の子より主人を大事にする女丈夫が多い。(小宮暁子)

【写真上】
『恋女房染分手綱』重の井子別れ 乳人重の井(中村芝翫) 平成16年9月歌舞伎座

【写真下】
『伽羅先代萩』[左から]一子千松(中村玉太郎)、乳人政岡(中村魁春)、足利鶴千代(上村吉太朗) 平成23年3月新橋演舞場