まちきど 町木戸

江戸の町まちにあった木戸。木戸番がいて犯罪警備のため夜は四ッ時(十時頃)に閉ざしていた。『八百屋お七』ではお七が吉三に会うため町木戸を開けようと、火見櫓に登って半鐘を打って木戸を開かせるところが見せ場となっている。また『盲長屋梅加賀鳶』ではその名も「木戸前」の場で喧嘩に向かおうとする加賀鳶が勢揃いして粋な風俗を見せる。上手の町木戸は閉まっていて、不安そうな町の人々が木戸からのぞいている。『三人吉三巴白浪』の大詰では、悪事が露見して逃れる三人に降りかかる雪と、無情にも閉まった町木戸が立ちふさがって、劇的効果を大いに盛り上げる。(小宮暁子)

【写真】
『三人吉三巴白浪』[左から]お嬢吉三(尾上菊五郎)、和尚吉三(尾上辰之助)、お坊吉三(市川海老蔵) 昭和57年2月歌舞伎座