ひけし 火消し

江戸時代の消防士。火消人足、鳶、鳶職ともいう。棒の先に、タカの一種である鳶(トビ)の口ばしのような鉄の鉤をつけた鳶口(とびくち)とよばれる消防用具を持っていたのが呼び名の由来。江戸の消防では、消火よりも延焼を防ぐためにまだ燃えていない隣家などを破壊する方が多かった。火事と喧嘩は江戸の華といわれた時代、纏持ちを先頭に鳶口を持って颯爽と火事場にかけつける姿は若者や、娘たちの人気の的で、芝居や落語に出てくる主人公の職業につかわれることも多い。落語『火事息子』の主人公は火事好きが高じて家出して火消人足になってしまう。名人五代目尾上菊五郎は火事というと火消人足の格好をして勇んで駆けつけたという逸話が残っている。『盲長屋梅加賀鳶』の「加賀鳶」は大名火消し、『神明恵和合取組』は町火消しの「め組」。(小宮暁子)

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『神明恵和合取組』め組の喧嘩 [左から]背高の竹(片岡市蔵)、二本榎の若太郎(中村萬太郎)、亀の子三太(澤村宗之助)、め組浜松町辰五郎(尾上菊五郎) 平成19年5月歌舞伎座