えんで 燕手

成人男性の髪は、額から頭頂部あたりを剃り上げているのが普通で、それを「月代(さかやき)」と呼びます。燕手は、その月代が伸びた状態を表わしたかつらのことを「総髪(そうがみ)」と呼びます。額から髷の根元に向かって短い毛が流れているのが特徴。燕手はその一部を漆でかためて髷の両側に出したものです。その形が燕(つばめ)の尻尾に似ていることが名称の由来とされています(客席からはちょっと確認しづらいと思いますが)。
かわいらしい燕のイメージとは裏腹に、燕手は国崩しや悪人の家老など、悪いたくらみをもった役に使います。(田村民子)

【写真】
『伽羅先代萩』仁木弾正(市川猿之助) 昭和31年2月歌舞伎座