なまじめ 生締

立役の髷(まげ)の名称のひとつで、油で毛をカチカチに固めた髷をさします。時代物と呼ばれる演目に出てくる髷の代表格。『熊谷陣屋』の熊谷や『助六』の助六など、主役級の大きな役に使われ、このかつらを使う役は俗に「生締物(なまじめもの)」とも呼ばれます。
同じ生締でも、役によって、髷の太さ、高さ、長さ、曲線の具合などが微妙に変わります。たとえば、助六の場合は、髷の根もとの立ち上がりがひときわ高く、髷の先端の切り口がやや太く短く仕上げてあります。髪を結う床山さんによると「生締という髷は覚えることが多く、ひときわ神経を使う」とのこと。
ほかに『梶原平三誉石切』の梶原平三、『実盛物語』の斎藤別当実盛などが生締のかつらを用います。正義の判断を下す、いわゆる捌(さば)き役が多く、立役の俳優にとって憧れとされています。(田村民子)

【写真】
『源平布引滝』斎藤実盛(市村羽左衛門) 昭和18年6月歌舞伎座