廓文章〜吉田屋 クルワブンショウ〜ヨシダヤ

作品の概要

執筆者 / 橋本弘毅
演目名 廓文章〜吉田屋
作者 不詳
初演 人形浄瑠璃―1793(寛政5)年5月 大坂・大西芝居(異説あり)
歌舞伎―1808(明和5)年10月 江戸・中村座
概要 大坂新町の遊女・扇屋夕霧と、さる豪商の若旦那・藤屋伊左衛門との情話を扱った、近松門左衛門作『夕霧阿波鳴渡(ゆうぎりあわのなると)』吉田屋の段を改作したもの。夕霧は実在した遊女で、才色兼備で大変人気が高かったといわれ、1678(延宝6)年1月に若くして亡くなった時には大坂中がその死を悼んだという。その翌月に上演された『夕霧名残の正月(ゆうぎりなごりのしょうがつ)』をはじめ、多くの「夕霧もの」と呼ばれる作品が作られた。『廓文章』はその中の代表作で、現在でも繰り返し上演される人気演目。

伊左衛門の役は初代坂田藤十郎が得意とし、『夕霧名残の正月』を皮切りに生涯18回も演じたといわれる。以来、和事の代表的な役のひとつとして今日まで伝えられてきている。没落して金も力もないが、愛嬌があって女性にもてるという上方らしい風情があふれる役どころ。「紙衣(かみこ)」という和事の象徴的な衣裳を着る。中村鴈治郎家の家の芸「玩辞楼十二曲(がんじろうじゅうにきょく)」のひとつにも数えられている。
片岡仁左衛門家では、花道を登場する際に「面明り」を使ったりと、古風な演出が多く用いられる。


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[左から]おきさ(片岡秀太郎)、喜左衛門(片岡我當)、伊左衛門(中村鴈治郎)、夕霧(中村雀右衛門) 平成16年11月歌舞伎座
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公演データ