黒塚 クロヅカ

作品の概要

執筆者 / 阿部さとみ
演目名 黒塚
作者 木村富子 作曲:四代目杵屋佐吉
初演 1939(昭和14)年11月 東京劇場
概要 奥州安達原(福島県二本松市)の鬼女伝説を基にした舞踊劇。上・中・下の三段から成り、上と下は能『黒塚(安達ヶ原とも)』を歌舞伎風にアレンジ、中の巻は能にはない歌舞伎のオリジナルで、月明かりの下で心の憂いの晴れた老女の無心の踊りが見どころになっている。それまであった能仕立ての『黒塚』から離れ、老女が自分の悪行に悩んでいること、高僧の教えに救いを得るが、信じた高僧の裏切りに怒り、仏の道もあてにならないと元の鬼にかえるという心理の変化を描いている。こうした老女の人間性に焦点が置かれている点が、人間を描く近代の歌舞伎らしい彩りを放っている。
二代目市川猿之助(後の初代猿翁)が初演し生涯の当たり役としたが、1963(昭和38)年の三代目猿之助襲名披露興行では病を得た初代猿翁の代わりに、三代目が23歳でこの作品を踊った。三代目猿之助が選んだ、初世猿翁の名舞踊を集めた「猿翁十種」に入れられた。以後練り上げられて三代目の代表作ともなり、2012(平成24)年には四代目猿之助が襲名披露演目として好演し、家の芸の伝承が実現された。

●トップページ・タイトル写真
[左から]老女岩手実は安達原の鬼女(市川猿之助)、阿闍利祐慶(中村勘九郎) 平成27年1月歌舞伎座

●ページ公開日 平成27年7月15日
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