摂州合邦辻 セッシュウガッポウガツジ

作品の概要

執筆者 / 小宮暁子
演目名 摂州合邦辻
作者 菅専助・若竹笛躬(合作)
初演 人形浄瑠璃―1773(安永2)年2月、大坂・北堀江座
歌舞伎―1835(天保6)年6月、京都・北側大芝居
概要 二段構成の時代物。「美しい瞳を持った拘拏羅(くなら)王子が継母妃の邪恋により目を抉って放浪の上、再び開眼する」という紀元前二百五十年ごろのインドの説話が日本に伝わった。これが謡曲『弱法師(よろぼうし)』、説教『愛護若(あいごのわか)』などの作品を生んだ。
『摂州合邦辻』はそれら先行諸作の集大成として成立した。1773(安永2)年2月、北堀江座で人形浄瑠璃としての初演のあと、歌舞伎での記録が出てくるのは1835(天保6)年6月、京都・北側大芝居まで待たねばならなかった。しかも通しではなく『合邦庵室』のみの上演である。
明治以降は二世坂東秀調、五世中村歌右衛門、六世尾上梅幸と続いた玉手御前役者のなかでも昭和20年代前半に関西から上京して演じた三世中村梅玉(高砂屋)は絶品と評された。続いて昭和を代表する女形二人、六世中村歌右衛門、七世尾上梅幸は各々の芸風を生かして魅力ある玉手御前を造形した。
浄瑠璃初演以来初の通し上演がなされたのは1968(昭和43)年6月の国立劇場で、実に195年ぶりのことだった。
美しい王子に、うら若き継母が心をよせるシチュエーションは、西洋ならばフランスのラシーヌ作「フェードル」(1677年初演)が名高い。いつの時代も観客の心をゆさぶるようだ。


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[左から]息女浅香姫(尾上右近)、高安奥方玉手御前(尾上菊之助)、高安俊徳丸(中村梅枝) 平成27年5月歌舞伎座

●ページ公開日 平成28年4月28日
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