矢の根 ヤノネ

作品の概要

執筆者 / 橋本弘毅
演目名 矢の根
作者 村瀬源三郎
初演 1729(享保14)年1月 江戸・中村座(『扇恵方曾我(すえひろえほうそが)』の一場面として)
概要 「歌舞伎十八番」のひとつ。初演の二代目市川團十郎以降、五代目、七代目、九代目の團十郎がたびたび上演し、現在まであまり途切れずに上演されてきた古風でおおらかな雰囲気を伝える荒事の代表格。1720(享保5)年1月に江戸・森田座で上演された『楪根元曽我(ゆずりはこんげんそが)』の中で同じ趣向が見られたともいうが、通常は現行の演出が定まった1729(享保14)年を初演としている。
主人公の曽我五郎時致は江戸時代から存在そのものが超人的で神様のように扱われてきた。荒事は超人的な力を表現する演技だが、型(様式、スタイル)をきちんと演じることで、俳優の演じる役がふつうの人ではないと観客に感じさせることに大きな特徴がある。背景の富士山、七福神の宝船、巨大な矢(破魔矢に代表される縁起物のひとつ)など道具にも縁起物が多く、舞台全体に華やいだ祝祭的な空気があふれる。歌舞伎らしい様式美、単純明快な筋、短い上演時間で、荒事の楽しさが存分に味わえる。


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曽我五郎時致(坂東三津五郎) 平成24年1月新橋演舞場
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