祭囃子の響く芝の下町。魚屋宗五郎は妹が無実の罪で手討ちになったと知り、断(た)っていた酒を呑んで酒乱の姿に。そして駆け込んで行く先は、妹を殺した殿様の屋敷。「皿屋敷」の趣向を盛り込んだお家騒動を背景に、描かれるのは町っ子の心意気。
魚屋宗五郎の器量よしの妹・お蔦は旗本の磯部主計之助(かずえのすけ)の屋敷へ妾奉公に上がりましたが、岩上典蔵という侍がお蔦に横恋慕していることに加え、典蔵たちがお家横領をたくらむ密談も聞いてしまいました。暗がりの中で典蔵がお蔦に言い寄るところを浦戸紋三郎が救いますが、典蔵は逆にお蔦と紋三郎が不義密通だと言い立て、お蔦は怒った磯部の殿様・主計之助に惨殺されてしまいます。
妹の死で悲しみに暮れる宗五郎ですが、きっとこれには相応の訳がある事だろうと自分に言い聞かせています。お屋敷から拝領したお金で一家は借金苦から抜け出せたのでもありました。そこへお蔦の召使いであったおなぎが酒を届け弔問にやってきましたが、真相を聞いてみると何の罪もないお蔦が、聞くに堪えない無残な死に方をしたと知れ、居ても立っても居られない宗五郎は酒に手を伸ばします。普段から酒を呑むと乱れるため懸命に断っている酒ですがこの時ばかりはと呑み出し、その勢いは止まらず、しこたま酔いが回った宗五郎は磯部の屋敷へと殴り込んでゆきます。
思いきり酔っぱらって屋敷へやってきた宗五郎の後を女房のおはまが懸命に追ってきました。あまりの無礼さに斬られてしまうところでしたが家老の浦戸十左衛門に救われ、宗五郎は「呑んで言うのじゃござりませんが」と悔しい思いを切々と訴えたあげくに、眠りこんでしまいます。目が覚めたところは屋敷の庭先、正気に戻った宗五郎は何があったのか見当が付きません。そこへ磯部主計之助が現れ、短慮からお蔦を殺めたことを深く詫び、弔意の金も与えます。そして典蔵の悪事も暴かれ、その場を逃れた典蔵もやがては捕らわれることとなります。
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