東海道四谷怪談 トウカイドウヨツヤカイダン

登場人物

人物関係図

人物相関図

主な登場人物

民谷伊右衛門【たみやいえもん】
色男だが冷淡で、欲望を満たすためには極悪非道な仕打ちも平気で行う色悪(いろあく)の典型とされる。もとは塩冶家に仕える武士でお岩と恋仲だったが、お岩の父・四谷左門に公金横領を暴かれたことで追放され、お岩とも別れさせられた。その恨みから、ひそかに左門を惨殺しておいて、敵討ちしてやるといってお岩とよりを戻す。その後お岩が健康を害したり、自身にも新たな欲望が生じたことから、お岩を離縁することを企み、非道な仕打ちをする。その恨みがもとで、幽霊となったお岩に次第に追いつめられていく。
お岩【おいわ】
四谷左門の娘で、お袖の義姉。伊右衛門と恋に落ち内縁関係になるが、伊右衛門の不行状を理由に妊娠中に実家に連れ戻される。伊右衛門が父を殺した張本人だと知らずに、父の敵を討つことを条件によりを戻して子を産み落とすが、心変わりした伊右衛門の身勝手な態度や伊藤喜兵衛によるひどい仕打ちにより、多くの人たちを恨みながら死んでいく。しかしその怨念は凄まじく、幽霊となって伊右衛門やその周りの人々を苦しめ、追いつめる。
直助権兵衛【なおすけごんべえ】
最初は直助という名で、途中から偽名を使うのだが、通称で直助権兵衛と呼ばれる。もとは塩冶家中の奥田将監という武士に中間(ちゅうげん)として仕えていたが、薬売りに転身。藤八五文(とうはちごもん)というオランダ伝来の薬がよく売れているため、羽振りがよい。お袖に横恋慕して、その夫である与茂七を殺し(実は人違いで別人を殺した)、与茂七の敵討ちを約束してお袖と同居をはじめる。その際、人目をごまかすため権兵衛と名のるようになり、職も鰻掻きとなった。悪人同士の伊右衛門と通じるところが多い。
お袖【おそで】
四谷左門の娘でお岩の妹だが、左門の実の子ではなく、幼いころに生き別れた兄が一人いる。塩冶の家臣・佐藤与茂七と結ばれるが、塩冶家断絶後に夫が行方不明となり、直助にそこをつけこまれて言い寄られる。楊枝を売る店で働きながら、裏では按摩宅悦の経営する地獄宿で私娼となっている。父と夫の惨殺死体を見せられ、敵討ちを条件に直助と同居をはじめるが、思いがけなく死んだと思った夫が現われ、板挟みになって死を選ぶことになる。
佐藤与茂七【さとうよもしち】
もと塩冶家の家臣で、お袖の夫。お家断絶の後は浪人し、高家への討入を果たすため世間から隠れるように生活している。お袖をめぐって直助と三角関係になるが、夫婦となっていたお袖と直助が命を落とすのを見届けた後、舅と義姉の敵である伊右衛門を討ち、最後には討入の大願も成就することになる。
宅悦【たくえつ】
浅草で働く按摩だが、陰では女房のおいろとともに自宅で地獄宿(売春宿)を経営し、お袖もその世話になっている。悪人だが小心者で、伊右衛門の言いなりになってお岩に不義をしかけ離縁を迫るが、かえって恐ろしい目に遭ってしまう。
小仏小平【こぼとけこへい】
伊右衛門の家で内職の手伝いをする男だが、旧主の子で病気のため足が不自由な塩冶浪士・小汐田又之丞(おしおだまたのじょう)を自宅に匿っており、生活は苦しい。又之丞の病気を治すため、民谷家に伝わる秘薬を盗もうとするが失敗して両手の指を折られ、殺された挙句にお岩の不義密通の相手とされてしまう。むごい仕打ちへの憤りと、又之丞に薬を渡したい一心から、幽霊となってお岩とともに伊右衛門を苦しめる。
伊藤喜兵衛【いとうきへえ】
高家の家臣で、裕福な生活をしている。伊右衛門に恋したかわいい孫娘・お梅の願いを叶えてやるため、親切にみせかけてお岩に毒薬を盛るなど、自分の望みのためには他人の犠牲も厭わないような横柄な男で、最後には伊右衛門に殺されてしまう。
お弓【おゆみ】
伊藤喜兵衛の娘。嫁ぎ先で娘お梅をもうけたが、夫に先立たれたため娘や乳母のお槙と実家に戻ってきた。父と娘を伊右衛門に殺され家が断絶した後は、お槙とともに流浪の生活を送る。敵を討ちたい一念でその厳しさにも耐えるが、最後は伊右衛門に不意を突かれ堀に蹴落とされる。
お梅【おうめ】
伊藤喜兵衛の孫娘、お弓の娘。難儀を救われたことから隣に住む浪人の伊右衛門に惚れ、思い詰めるあまり恋患いなってしまう。その一途な気持ちがお岩を死に追いやる。願いがかなって伊右衛門と結婚するが、祝言の夜にお岩の亡霊に惑わされた伊右衛門に殺される。
四谷左門【よつやさもん】
もと塩冶家の家臣で、お岩とお袖の父。伊右衛門が公金を横領していたことを知りお岩と別れさせる。お家断絶後の生活は世渡りが下手なこともあって苦しく、娘を働かせたり自ら物乞いをするありさま。伊右衛門の復縁の願いに応じなかったため、憎しみを募らせた伊右衛門に惨殺される。
奥田庄三郎【おくだしょうざぶろう】
塩冶浪士・奥田将監の子。人目につかない浅草の片隅で与茂七と討入の相談をする。用心のため与茂七と着物を交換して帰ることになるが、そのために人違いで直助に殺されてしまう。さらに遺体の身元がばれないよう直助が顔をつぶしたため、お袖は夫が殺されたと思い込む。