観劇+(プラス)
執筆者 /
飯塚美砂
聞いたか坊主(きいたかぼうず)
「聞いたか、聞いたか」と言いながら、滑稽なやり取りをする坊主。状況を説明する狂言回し的な役である。『鳴神』の幕開きに登場する黒雲坊、白雲坊がそれにあたる。『京鹿子娘道成寺』の所化(坊主)たちも「聞いたか、聞いたか」といいながら登場する。
仕方話(しかたばなし)ここに注目
セリフに身振り手振りを交えてする物語。『鳴神』では雲の絶間姫が、夫との恋物語と偽って思わせぶりに仕方話をしてみせる。この、艶麗でしかも下品にならない仕方話で、謹厳な鳴神上人を籠絡するまでの面白さが、女方の腕の見せ所でもあり、のちの鳴神上人の豪快な荒れの演技と対をなす、一幕の山場となっている。
柱巻(はしらまき)ここに注目
柱に巻きつくように両手、片足をかけて見得をする演技。能楽では同じような型が『道成寺』にあり、強い執念を表していると考えられる。『鳴神』では姫に裏切られた鳴神上人がこの“柱巻”のほか、“不動の見得”などで怒りを表す。
投げ人形(なげにんぎょう)
胴人形ともいう。小道具の一つで、立廻りなどの吹き替えとして使われる等身大の人形。『鳴神』では上人をとどめようとする弟子たちに交じって使われ、投げ飛ばされている。