忍夜恋曲者~将門 シノビヨルコイハクセモノ~マサカド

将門(まさかど)の娘滝夜叉姫(たきやしゃひめ)は妖術使いとなり、父に代わって天下を狙う。

滝夜叉姫が暗がりから凄艶な姿で現われ、勇者光圀を誘惑して味方に取り込もうとする。
将門のかつてのアジトで繰り広げられる反体制の王女の計略やいかに。
妖しい美しさを放つ舞踊劇。

あらすじ

執筆者 / 阿部さとみ

古御所に現れる美女

ここは相馬の古御所。平将門は天下を狙って滅ぼされ、かつてはきらびやかだった将門の御所も荒れ果てている。どこからともなく麗しい傾城(位の高い遊女)が現れる。蝋燭の光のゆらめきに照らされて、煙と共にセリ上がってくる姿が妖しく美しい。彼女は手紙を取り出し、恋の手管に長けている遊女でも、本当の恋は苦しいものだと、切なさを訴え、古御所に向かう。

傾城如月実は将門娘滝夜叉姫(坂東玉三郎) 平成25年4月歌舞伎座
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傾城如月(きさらぎ)の誘惑

古御所には勇者大宅太郎光圀がまどろんでいた。ここで起きるという怪異の噂を聞きつけて乗り込んでいたのだ。遊女に呼びかけられて目を覚まし、こんなところに居るのは妖怪だろうと斬りかかる。女はそれを押しとどめ、自分は京島原の傾城如月だと名乗る。少しも警戒を解かない光圀に、実は以前に光圀を見染め、その恋心からここまで来たのだと目をうるませて迫る。

[左から]傾城如月実は将門娘滝夜叉姫(坂東玉三郎)、大宅太郎光圀(尾上松緑) 平成25年4月歌舞伎座
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将門戦死の物語

光圀はわざと打ち解けたふりをしながら、相馬御所がきらびやかだった頃に話を転じ、将門の乱から討ち死するまでの物語へと進めていった。光圀が、将門が敵方の放った矢先にこめかみを射貫かれ、馬から落ちて落命する最期の様を語るのを聴くと、如月はこらえかねて忍び泣く。

大宅太郎光圀(尾上松緑) 平成25年4月歌舞伎座
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廓の恋

なぜ泣くのかという光圀の問いをはぐらかし、如月は廓の客と遊女のつや話を持ち掛け、懐紙を使って踊る。光圀も付き合い、客になった心で密会の様子などに興ずるうちに、如月が錦の御旗を取り落とす。光圀が拾い、如月がすぐ取り返したのだが…。ここで筋から一旦離れて、二人で踊る「踊り地」と呼ばれる場面になる。ここが歌舞伎舞踊の面白いところ。

[左から]傾城如月実は将門娘滝夜叉姫(坂東玉三郎)、大宅太郎光圀(尾上松緑) 平成25年4月歌舞伎座
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傾城如月実は…。

光圀は如月の様子を見て、将門の娘であろうと詰め寄った。如月はとうとう滝夜叉姫だと名乗りを上げ、本性をあらわし、文武に優れた光圀を味方にしようと思ったが、こうなったらお前の命を絶つ!と宣言。二人は、一転して立廻りになる。激しい戦いの末、古御所が崩れ落ち、滝夜叉は蝦蟇に乗って崩れた大屋根の上に現れ、光圀をきっと見下ろして幕となる。

【左】[左から]大宅太郎光圀(尾上松緑)、傾城如月実は将門娘滝夜叉姫(坂東玉三郎) 平成25年4月歌舞伎座
【右】[左から]大宅太郎光圀(尾上松緑)、傾城如月実は将門娘滝夜叉姫(中村時蔵) 平成18年12月歌舞伎座
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