本能寺で主君を討った光秀が、尼ケ崎の閑居にひそむ宿敵久吉をねらって竹槍を突き入れた。しかしそこにいたのは光秀の母。身替りに竹槍を胸に受けた母は、息子を主殺しの人
非人と責めたてて息を引き取る。戦場で深手を負って戻った光秀の息子十次郎も絶命。
親と子を一時に失った光秀。逆賊非道の報いは重い。
主君尾田春長の執拗な辱しめに耐え続けた武智光秀だったが、ついに六月二日、都・本能寺に陣を張る尾田春長を夜襲して討ち取った。光秀の母皐月(さつき)は息子の主殺しを良しとせず、尼ヶ崎の隠居所へ一人身を退いてしまった。そこへ光秀の妻操(みさお)と十次郎の許嫁初菊(はつぎく)が皐月の身を案じて訪ねてくる。
皐月、操、初菊がうち揃っている隠居所へ 旅僧に身をやつした真柴久吉がやって来て一夜の宿を乞い、皐月に頼まれて気軽に風呂の湯をわかす。皐月の勧めで、旅僧が先に風呂に入る。
隠居所に光秀の息子十次郎が訪れ、皐月に出陣の許しを請う。皐月は可愛い孫十次郎と初菊に祝言の杯をさせて、十次郎を戦に送り出すことにする。初菊は夫に急かされて泣く泣く重い鎧を運び出陣の身支度を手伝う。
十次郎が出陣したあとに、夕顔の咲く闇のなかから光秀が現われ、ひそかに隠居所をうかがう。光秀が庭先から久吉を狙って竹槍を突き入れる。と、久吉と思ったのは身替りになった母の皐月だった。胸に竹槍を受けて瀕死の皐月は 光秀を諫めるが信念を曲げない光秀は聞く耳をもたない。
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